2003年5月25日

デフォルト

意外とコンピュータなどを日常使っていて、
つかうことに違和感を感じなくなりがちな単語に「デフォルト」がありますな。
焼き肉屋とかに行っても、
「ここ、肉がデフォルトで凍ってるよね」
とか言ってしまったりはしませんが、それに近いことはありがちです。

とはいえ、多少金融をかじったことのある人なら、
「デフォルト」が「債務不履行」を意味することをご存じでしょうし、
ちょっと古めの辞書を引けば「怠慢」「不出場」などの意味が出てきます。
どこにも「初期値」などと言う意味は出てきません。
どちらかと言えばネガティブな意味です。

そう考えると、なんでデフォルトを初期値の意味で使うようになったのか、
と言うことが気になってくるのが自然でしょう。
で、調べると簡単に、
「当然なされるべき行動がなされなかったときに起こる事態」
のことをdefaultと言うことがわかるわけで、
債務を払うべき時に払わないでいたときに起こる事態も、
入力すべき値を入力しなかったときに入る値も、
同じことを意味することがわかります。

とはいえ、気になるのはなぜ、"factory setting"とか、
"primary value"とか"initial value"とかそういう用語より
defaultがデフォルトになったのか、と言う点です。

まあ、それは本当はどうでも良くて、
書きたいのは文系と理系の違い、みたいなことです。

私は根っからの文系を自認しています。
高校の数学1を落としそうになって留年しかけましたし、
センター試験の数学1は平均点の半分もとれませんでしたし。

なんですが、いまコンピュータ関連の研修を受けてて思うのが、
コンピュータに関することって、理系だから理解が早い、
とは限らないのではないか、と言うことです。
私は割とできる方なので、おまえのどこが文系だ、と言われますが、
周りの理系の方々とは明らかに理解の仕方が違ってると思われます。

端的に言えば、世界史みたいなのを思い浮かべてもらえればいいんですが、
いるかどうかもわからないような王様について延々調べたり、
本物かどうかもわからない遺跡から文化を推測したり、
というのはまさしく文系の営為です。

つまり、文系がコンピュータをわかろうとする際、
そういう曖昧な概念をそのまま理解するのに対し、
理系の人は厳密にわかろうとするのではないか、と思うのです。
そしてその両極端の人が「コンピューターを使える人」として
認定されがち、だと思うわけです。

理系的な立場からするとコンピュータは人間が作った物だから、
人間が理解できて当然、と言うものでしょう。
私はよく人にコンピュータを教えるときに、
「おまじないだと思って」とか「ああ、きっと風水が悪いんだろうね」
とか言いがちなのですが、これはそれとは逆で、
たくさんの人間が関わって作った物だからこそ、わからない、
というあきらめが含まれているのです。

一般によく理解できていない人は、
どうでもいいところを厳密に理解しようとしてしまったりしがちです。
つまらなくてもいいようなところでひっかかってしまったり。
その一方で数学に見られるように抽象的な概念の理解能力、というのが
理系の優位な点だったりもするので、多少事態は混乱してきます。

最初の話に戻りますが、
理系な人は「デフォルト」がそういう意味を持つことについて
無頓着な場合が多いと思います。理系な人というか、
主にコンピュータな人な訳ですが。

それに対し、私はデフォルトの語源とか、
それがコンピュータで使われるようになった経緯とかの方にとても
興味があります。私は私でそこに厳密性を求めているわけで、
これはこれで、とても理系的な営為でありつつも、
理系的な興味関心の分野には入らない、と言う矛盾があります。
もっといえば、この経緯がわかったとして、
それは本当にそうなのか、という証明はできないわけで、
これはこれで、とても文系的な営為である、とも言えるのです。

Posted by kent at 2003年5月25日 19:27